ミチイロ

私の偏愛 vol.2◆部屋にこもりがちな私を支えるハーブティー

約 6 分

今日は原稿の締め切りが重なってしまった。時間との勝負、スケジュールを調整しなかった自分への後悔。緊張感で体がこわばり、呼吸が浅くなる。

そんなとき、左手を伸ばした先には、なめらかで丸みのあるぬくもりがある。キーボードから両手を離し、その温度を包み込む。鼻をかすめる香りは、真夏の庭の緑のようにみずみずしくて、少し甘い。その香りを楽しもうとして、深呼吸をひとつ。

一口含めば、じんわりと体があたたまる。筋肉がゆるんで、自然と笑みがこぼれた。酸味、苦味、甘み。植物たちがくれるささやかな贅沢。

私の体内を知り、私が欲して止まないもの。それがハーブティーだ。

お茶と出会って、家の時間は豊かになった

ライター業の執筆時間は長い。一人っきりパソコンと対峙し、正答のない完璧主義と向き合う時間、何か“お供”が欲しくなる。音楽、お菓子、シーシャ……。一通り試して私にぴったりだったのは、お茶だった。

もともとお茶は好きだったが、日常的に飲んでいたわけではない。今のようなお茶好きになるきっかけをくれたのは、ドライフルーツをお湯で淹れるフォンダン・ティーだ。果実の香りがたちのぼり、ビタミンそのものを飲むような一杯。私にとって、それは全く新しいお茶の定義だった。

その感動を親友に話したところ、「雪樹は感覚が鋭いから、香りや色、味を楽しめるお茶が好きなんじゃない?」とうれしい言葉をかけてくれた。それから、もっと趣味としてお茶に“ハマって”みることにしたのだ。

お茶と一言で言っても、様々な種類がある。渋みの中に甘みを帯びる日本茶、花の香りが豊かな中国茶、デザート気分を味わえるフレーバーティー。冬はホット、夏は水出し。仕事中なくならないようボトルで淹れようか、はたまたミルクで煮出して贅沢気分を味わおうか……。

一度ハマるととことん楽しむ私は、あらゆるティーショップから茶葉を取り寄せ、リビングの棚に陳列した。その数25種類(一時は40種以上になってしまったことも)。「お茶が好き」と公言するようになってから、友だちや仕事仲間から茶葉を贈られる機会も増えた。「今日は何を飲もう」と茶葉を選ぶ時間が、その日の気分を高めてくれる。

変わっていて万人受けしないけれど、助けになるハーブティー

ある休日、散歩中にハーブティー専門店を見つけた。ハーブティーというジャンルはさほど意識していなかったが、「ティー」「専門」を視認すれば勝手に入ってしまう状態だったから、自然な流れである。

店員さんは、私の仕事や生活習慣、ストレス源などについて丁寧にヒアリングし、いくつかの茶葉を紹介してくれた。「香り」や「味」で茶葉を選んでいたので、「ライフスタイル」を軸にセレクトが決まるのは驚きだった。

いくつかおすすめされたブレンドの中に、共通して入っていたのがネトルだ。

「ネトルは血液の循環を良くして、基礎体力の向上に役立ちます。座りっぱなしのお仕事だと、血が滞りやすいと思って……」

店員さんの解説を聞きながら試飲してみると、青く、クセのある香りが鼻の奥を刺激する。「おいしい」と即座に反応できる味ではない。

「変わってますね……香りが……」

「そうですよね、好き嫌いが分かれます。ハーブティーはビタミンなどの栄養成分が豊富ですが、決して万人受けする味ではありません。健康を支えてくれる良き友として飲めば、愛せるんですけれど……なかなか人気は出なくて」

店員さんが眉をハの字にしながら語るその言葉から、私は「このひと、本当にハーブティーが好きなんだな」と感じた。数種の茶葉を購入し、お茶のコレクションに加えた。

辛い時、苦しい時にそばにいてくれるあたたかさ

体は正直だと思う。不思議なことに、棚に並ぶ茶葉のなかで一番減りが早いのはハーブティーだ。

寝起きの悪い朝、食欲も失せる暑い昼、締め切りが近づいて気分がすぐれない夜。逃げられない体調の悪さに襲われるとき、勝手に体が求めるのは、苦くてクセのある一杯なのだ。

カフェインの入っているお茶は一日の量を制限するが、ハーブティーをはじめとしたノンカフェインのお茶は量を気にしないで楽しめる。1リットルのボトルに淹れる常備茶と、ティーポットで淹れる気分に合わせたお茶を1日2〜3種。今の私が飲むものは、全てお茶だ。

血流が促進されるためか、飲んだあと数時間は体が心地よくあたたかい。リラックス効果があると言われるカモミールを飲んだ日には、大概の苛立ちは静まる。魔法かというくらい。

何より、そんな存在が常にそばにあることに安心する。

私の親友は「自分のご機嫌をとる」という言葉をよく使う。自分というものは、自分自身が一番よくわからない。不機嫌になった私は私にとってモンスターだ。うまく自分のご機嫌をとれる人がうらやましいと思っていた。

ハーブティーはそんな私に対して、くしゃっとした笑顔で「あーはいはい、いいから落ち着いて」と言ってくれる。「一旦手を休めなさいな。頭を止めなさいな。お湯を沸かして、大好きなティーポットを用意して、ね」と。

これからも私のそばで、私のご機嫌を取ってほしい。変わり者だけれど優しくて力強いあなたを、私は求めているよ。

そう心のなかでささやきながら、今日もポットの湯を葉に注ぐ。

香りがふんわりと、部屋を包む。

おすすめのハーブティー&ショップ

私の心のお医者さんとも言えるおすすめのハーブティーと、それを販売しているショップをご紹介します。

enherb―無敵のアタシ

私にハーブティーの魅力を教えてくれたenherbさん。全国に店舗がありますし、ネットショッピングでも商品を購入できます。ブレンドされている茶葉の説明なども細かく掲載しているウェブサイトは必見です!

そのなかでもリピートしているのが「無敵のアタシ」というブレンドです。ダイエットサポートティーという肩書で販売されていますが、これを飲むとびっくりするくらい気分が晴れます(そういえば、少し体のラインも変わってきたかしら?)。魔女が飲んでいそうなクセのある味わいも楽しんで。

enherb―無敵のアタシ

LUPICIA―キエラ

全種のお茶を魅力ある形で発信し続けるLUPICIAさん。大ファンです。会員限定のお茶の祭典は夢のような空間でした。オンラインショッピングのラインナップも豊富です。

ハーブティーのなかで特におすすめのブレンドは「キエラ」。豆が豊富にブレンドされていて、ハトムギの落ち着いた香ばしさが魅力。食事と共に楽しむこともできるくらい飲みやすい味が、特に気に入っています。日々のコンディション調整に役立っています。

LUPICIA―キエラ

ナゴミナチュルア―有機爽快ミント&ネトルブレンド

東京都人形町にカフェスタイルのお店を構えるナゴミナチュルアさん。テラスで季節に合わせた一杯を楽しむことも、ハーブティーに合うランチを食べることもできます。

数あるハーブティーのなかでも大好きな一杯は「有機爽快ミント&ネトルブレンド」です。ネトルの草原のような香りに、ミントとレモングラスが一陣の風のような涼しさを加えた、ハーブティーブレンドとして完璧すぎる味わいを楽しめます。これぞハーブティーのおいしさ!と感動する一杯です。

ナゴミナチュルア―有機爽快ミント&ネトルブレンド

 

執筆・写真:宿木雪樹(@yuki62533
編集:卯岡若菜(@yotsubakuma

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