ミチイロ

私の偏愛vol.5◆私の偏愛する少女漫画

約 6 分

子供の頃から少女漫画が好きだ。マニアと呼べるほどではないが、常に何かしら追っている作品がある。

辛いことがあったとき、私は近所のTSUTAYAで少女漫画を10冊ほどレンタルし、布団の中で一気読みする。読んでいる間は辛いことを忘れられるし、10冊読み終えた頃には少しだけ元気になっている。

私にとって少女漫画はライナスの毛布みたいなもので、ともに歩んできた相棒。
ヒロインの倍以上の年齢になろうとも、卒業する気はないのだ。

少女漫画と私の歩み

少女漫画との出会いは幼稚園の頃。6歳年上の姉が小学校に行っている間、勝手に姉のりぼんを読みふけり、文字を覚えた。

とはいえ、まだ4歳か5歳。わからない単語もたくさん出てくる。読んでいた漫画に「公認カップル」という言葉が出てきて、姉に意味を尋ねると、「子供は知らなくていいの」と怒られた。

姉がりぼんを卒業してからは、自分で買うようになった。毎月、発売日は急いで下校し、母からもらった400円を握りしめて近所のセイコーマート(北海道に多いコンビニ)へ走る。

この時代のりぼんは、『姫ちゃんのリボン』『ママレード・ボーイ』『天使なんかじゃない』など、後世に語り継がれる名作が多かった。

私が特に好きだったのは、小5のときに連載が開始した小花美穂先生の『こどものおもちゃ』。

学級崩壊の目を背けたくなる描写。人気子役の紗南がホームレスの青年を「ヒモ」にしている(と本人は思っている)こと。のちに紗南と結ばれる羽山が、姉から精神的虐待を受けていること。そういったビターな設定の数々は当時のりぼんとしては斬新で、私はこの漫画に魅了された。

しかし、中学生になると「りぼんは子供っぽい」と思うようになり、買うのをやめた(『こどものおもちゃ』だけは友達から借りて最後まで読んだ)。

その代わりに、別マ(別冊マーガレット)や花ゆめ(花とゆめ)の好きな作品だけをコミックスで購入するようになった。『っポイ!』『紅茶王子』『恋愛カタログ』などだ。

中学生といえばもっとも恋に憧れるお年頃。私も友人たちも、少女漫画で描かれる恋愛に憧れた。

しかし高校生になって彼氏ができると、現実の恋愛が少女漫画ほど絵になるものじゃないと知ってしまう。みんな「あんなのリアリティないよねー」と冷笑的になり、少女漫画から離れていった。

しかし、私は恋を知ってからも少女漫画を読み続けた。「漫画と現実とは別腹!」と割り切って楽しむようになったのだ。

そのまま大人になり、いくつかの恋愛を経て結婚。35歳となった今も変わらず少女漫画を愛読中で、2019年現在は、『カカフカカ』『僕と君の大切な話』『ちはやふる』『恋わずらいのエリー』『花野井くんと恋の病』など、複数の作品を追っている。

少女漫画を好きな理由

少女漫画を好きな理由を分析したことがなかったので、この機会に考えてみた。

①キュンキュンできる

「キュン死に」という言葉をご存知だろうか? 漫画『ラブ★コン』で主人公のリサがよく使う言葉で、死にそうなほどキュンとしてしまうことを言う。

何を隠そう、私は無表情なわりにキュン死に体質。よくキュンキュンしすぎて動悸と呼吸困難が起こる。気持ち悪いことを承知の上で告白するが、私はその感覚がたまらなく好きだ。

しかし自分自身の恋愛となると、「その恋が実るかどうか」という観点で見てしまうため、手放しでキュンキュンできない。悪趣味だが、「他人の恋路を鑑賞しているとき」のほうがよっぽどキュンキュンできる。

とはいえ、友人や後輩たちの恋愛をウォッチして楽しむのは不謹慎(してるけど)。その点、少女漫画なら見放題だ。ふたりきりの場面や心の中など、現実ならウォッチ不可能な部分まで見れてしまう。

私は非常に無気力なので、定期的に少女漫画を読んでキュンキュンすることで、生命エネルギーをチャージしているのだ。

②現実逃避

漫画レンタルサイト・Renta!のCMで、少女漫画を読んでいる女性が上司らしき男性に「仕事の役に立つ本読めよ」と言われるシーンがあった。

バーカ。役に立たないから読みたいんじゃん。現実の役に立つものなんか読んだら、現実逃避できないじゃん。

そう言いたくなる。

私が少女漫画を好きなのは、それが現実からほどよく離れた世界だからだ。現実に疲れているとき、世知辛い現実を描いた物語は読みたくない。かと言って、SFやファンタジーなど、非現実が舞台だとどうしても物語に入り込めない。

その点、少女漫画は現実との距離がちょうどいい。リアルな世知辛さが描かれている作品でも、ストーリー展開にはちゃんと少女漫画的な「救済」がある。だからこそ安心して読めるのだ。

③多様な楽しみ方

キャラ、ストーリー、絵、表現方法、せりふ……。少女漫画の観点はいくらでもあり、楽しみ方も多様だ。

「○○かっこいい……!」と推しキャラに萌える作品もあれば、「私だったらこの先の展開どうするかな」と作者目線でストーリーを予想したくなる作品もあるし、テーマについて深く考えさせられる作品もある。もちろん、共感や自己投影をしたくなる作品も。

また、読めば読むほど少女漫画のセオリーがわかってくるので、セオリーをはずしてきた作品に出会うと「おっ、これはよくある○○展開へのアンチテーゼだな」などと嬉しくなる。先行文献と比較して分析する楽しみ方だ。

そんなふうに多様な楽しみ方を知ると、次から次へと新しい作品を読みたくなる。

好きな作品を紹介

最後に、私の好きな少女漫画を紹介しよう。

はしたなくて ごめん/石田拓実

しっかり者の真奈緒は、同級生のメガネ男子・与倉をネタにエロい妄想をするのがマイブーム。与倉はあくまで妄想の対象であり、現実の恋愛はしたくない。しかし、喫煙を与倉に見られたことがきっかけで親しくなり、酔った勢いで一夜を共にする。

全編通して、与倉は「真奈緒への思いは恋愛感情か性的興味か?」と逡巡する。少女漫画の登場人物はすぐに「恋」を自覚しがちだが、与倉は自分に芽生えた感情が恋なのかを考え続け、なんと7巻目でようやく自覚するのだ。その前に何度もキスしてるし、なんなら6巻で正式に付き合ってるのに。遅いよ、与倉!

そして、ようやく恋を認めた与倉の台詞がこちら。

「こんな自分勝手で やましいことばっかりで 全然キレイでも純粋でもない気持ちだけど……西さんが好きです」

ここにたどり着くまでに7巻分も思い悩む真面目男子、めっちゃよくない!? 真面目ゆえに思い悩んでるのにちゃっかり手は出してるところも、めっちゃよくない!!?

真奈緒やほかのキャラもみんな魅力的なんだけど、私はとにかく与倉が好き。地味系メガネ男子がツボというのもあるけど、今までになかったキャラだと思う。与倉見たさに全巻買いそろえた。

キャラだけじゃなくストーリーも絵も良すぎるので、とりあえず読んでみてほしい。

 

執筆・撮影:吉玉サキ(@saki_yoshidama
編集:卯岡若菜(@yotsubakuma

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