ミチイロ

私の偏愛vol.10◆没後20年経った今も色あせないかっこよさ hide(X-JAPAN)

約 8 分

私の人生は、さまざまな音楽で支えられている。人に相談することが苦手な私にとって、音楽は私の心を時に癒し、時に励ましてくれる大切な存在だ。その音楽人生の始まりは、X-JAPANそしてhideとの出会いだった。

出会いから30年以上経つが、今もなお私の心を魅了し続け生きる礎となっている存在、それがhideだ。

X-JAPANそしてhideとの出会い

私がX-JAPANに出会ったのは小学4年生の時だ。親せき宅に泊まりに行ったとき、高校生のいとこの部屋に貼ってあったのが、X-JAPAN(当時はX)のポスターだった。

そこには、フランス人形のように美しいYOSHIKI、長い髪をツンツンに立てたTOSHIとPATA、大人の魅力あふれるTAIJI、そして赤と金の髪色でファッショナブルなHIDEがいた。そのカッコよさと美しさに一瞬で虜になった10歳の私。

しかし、驚いたのはこれだけではない。そのビジュアルに興味を持った私に、いとこが曲を聴かせてくれたのだ。今となっては、どの曲を聴いたのかは思い出せないけれども、ROCKというものを初めて聴いた私の体に電流が走ったことは昨日のことのように覚えている。

それからというもの、私はX-JAPANの虜となった。当時の小学生といえば、光GENJIが大人気。「かーくんがかっこいい!」「いや、あっくんの方がいい!」なんて会話が交わされる昼休みには、ただ適当にうなずくというのが私の小学生時代。家に帰れば、毎日ダビングしてもらったカセットテープを聴き、お年玉で買ったポスターを眺めてうっとりする。そんな日々が続き、X-JAPANのファッションリーダーHIDEに魅了されていったのが中学時代。

私が高校生になる頃には、ソロ活動も活発となっていて、「大人になってお金を貯めたら絶対ライブに行こう」とひそかに目標を立てたのもこの頃だった。しかし、その目標は叶うことはなかった。

私の生き方を変えたhideの死

その日の出来事を今も昨日のことのように鮮明に覚えている。友人の部屋の小さなテレビを見ていたとき、突然「X-JAPANのギタリストhideが死去」とのニュース速報が!この日ほど自分の目を疑った日はなかった。しかし、再びニュース速報に同じ文字が流れてきて、その瞬間私の世界はすべてモノクロームになった。とても天気が良い日で、太陽の光が差し込む明るい部屋の中、私だけがモノクロームの世界にいる、そんな感覚だった。

それから、何日も何日もテレビではhide死去のニュースが流れ続け、私は現実を受け入れざるを得なかった。「もう二度とhideをこの目で見ることはないんだ」と思うと、涙すら出ないほど悲しくて苦しくてやりきれなかった。「hideのライブに行く」という私の夢は、もう二度と叶うことはないのだ。

この出来事は、その後の私に大きな影響を与えた。志半ばで死んでしまったhide。そのことを知り、私はそれまでネガティブで言い訳の多い人生を送ってきたことを後悔した。そして、「やりたいことは今やろう。会いたい人には今会おう。」と思うようになり、色々な出来事にも前向きに取り組むようになった。

時には失敗もしたし、思うような結果が出ないこともあったけれども、ポジティブに行動していくことで天職ともいえる職業に就けたし、夫に出会うこともできた。hideの死がなければ、きっと今も自分の人生に言い訳しながら生きていたのだろう。

hideを失った悲しさは計り知れない。しかし、私の人生を変えたターニングポイントでもあったと思っている。

没後20年経ったとは思えないビジュアルと音楽性

ここからは、hideのすばらしさについて語ろうと思う。hideが亡くなって今年で21年経つが、彼のビジュアルと音楽性は驚くほど色あせていない。むしろ、今の時代にマッチしていると言ってもいいほどだ。

YouTubeには数々のhide動画があげられているのだが、そこには20年前とは思えないくらいオシャレなhideがいる。ファッションに疎い私でも、さすがに20年前のファッションを見れば時代の流れを感じるものだが、hideには全くその様子が感じられず、今も生きているんじゃないかと思わせるほど。当時も「最先端」「未来から来た」と言われていたけれど、今見ても彼のビジュアルは最先端だと感じさせる。

hideのすごいところはビジュアルだけではない。見た目に負けず劣らず、音楽性も今なお聴いても新しく感じさせるものなのだ。ポップなナンバーで当時も人気曲となった「ROCKET DIVE」は、去年Dragon Ashがカバーしサッカーワールドカップの中継で使用された。また、hideの曲はポップな曲だけでなく、バラードやロックとサンバを融合させたものがあるなど、非常に音楽性の幅が広い。

さらに、hideの書く歌詞には独特の世界観がありながらも、頭の良さを感じさせるものが多い。少しエッチな曲には隠喩が多く含まれているし、柔らかい表現の歌詞に深い意味が込められているというものもある。子供の頃には大声で歌っていた曲が、実はエッチな曲で思わず赤面……なんてことも。ストレートな表現とはまた違った、まるでスルメのような噛み応えのある曲だからこそ、今聴いても色あせないのかもしれない。

今の時代だからこそ聴いてほしい名曲「MISARY」

最後に、閉塞感のある今の時代だからこそ聴いてほしいhideの名曲「MISARY」を紹介する。「MISARY」はアメリカン・ロックの明るい曲調で、発売した1996年当時から人気の一曲だった。注目すべきはその歌詞。曲全体に「悲しいことや辛いことも全て受け止めて、それでも前を向いて進んでいこう」というメッセージが込められている。人と少しでも違うことをすればSNSが炎上したり責め立てられたりする今の世の中で、生きづらさを感じている人が多いと思う。そんなときにはぜひ「MISARY」を聴いてほしい。きっと気持ちが楽になるはずだ。

私もこの曲にずっと支えられてきた。私はこれからもhideを愛し、hideの曲を聴き続けるだろう。そして、いつの日か彼のお墓参りに行って感謝を伝える。それが今の私の目標だ。

「MISARY」収録作品のおすすめ

「MISARY」は、ソロ2枚目のアルバム「PSYENCE」、ベスト盤である「hide BEST~PSYCOMMUNITY~」「hide SINGLES~JUNK STORY~」「We Love hide~The Best in The World」に収録されています。

特におすすめなのは、ファン投票による人気曲が収録されていてシングルバージョンのMISARYが聴ける「We Love hide~The Best in The World」と、hide存命中に発売されていてリミックスバージョンが収録されている「PSYENCE」です。



執筆・撮影:中村楓(@kaede_kaigo
編集:卯岡若菜(@yotsubakuma

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